キャノンボール記録:総括

キャノンボールを達成した今だからこそ言えるが、このチャレンジ、思っていたよりは難易度は高くない。
ただしもちろん無条件に達成できる、というわけではないことは確かで、自分の印象としては達成に必要な条件として、走力7割、準備3割といった具合だと思う。それだけ入念な事前準備と計画が必要だ。
今回、自分は試走予定で無造作に走り出して、そのまま流れで完走した無計画なチャレンジのように見えるかもしれないが、実際は、翌月にチャレンジすることを前提に事前準備自体はほぼ終えていたからこそラストまで走りきれた。
キャノボにチャレンジするにあたり重要だと思われる準備/計画を列挙してみる。
(1)ルートの確認/GPSへの流し込み
これが一番大事。自分の走行記録を読んでもらってもおわかりいただけるかと思うが、ちょっと道に迷うだけでも数分はあっという間に失ってしまう。この失った数分を走行で取り返すというのは想像以上に難しい、というか不可能。そういう意味ではロスを最小限に抑えるためにもGPSナビはマストアイテム。自分も最後の最後で電源落ちに見舞われて、若干信頼性に欠ける部分はあるものの、現状ならEdge800がベストの選択肢ではなかろうか。(発売されたばかりのパイオニア ポタナビもポテンシャルは高そうではあるが)
ナビのルートは、ルートラボに公開されている既存データを使うのが簡便ではあるが、個人的には、一から自分でルートを引いてみることをオススメする。特にバイパス区間などを如何に回避するか、といった細かいニュアンスは自分でルートを引いてみないと覚えられない。もちろん、ルートを引くにあたっては既存データを参考にするべきだし、wikiなんかで細かい部分の確認を行うべきだ。
(2)時期/天候/時間
キャノボ決行の時期としては、今ぐらいの気候、3月下旬〜GWあたり、もしくは秋がいいだろう。箱根が凍結するような時期はもちろん無理だし、かといって夏は脱水による消耗が激し過ぎる。自転車を漕いでない時にちょっと肌寒いかなっていうぐらいがベストではないだろうか。
天候はもちろん晴れでないと無理。雨天単独走行は、体力的な問題のみならず機材面や安全面でリスクが高すぎる。今回のような小雨がパラつく程度なら問題ないと思う。気象条件で何より重要なのは風向き、風速。東海道は基本西風なのだが、静岡あたりでは東風が吹いている時もままあるようだ。実際、先週末も、決行前夜の金曜夜は東風が吹いていた。Yahoo!などの風予報サイトでは33時間後までの予報が見られるので、決行前の最終判断材料とすべきだろう。常時追い風でスタートできたら、達成は半ば約束されたようなものだ。
出発時間は諸説あるが、3大都市圏を深夜〜早朝に抜けるプランがいいだろう。大阪→東京方向ではasagiriさんが達成された15時頃から、私やbaruさんがやったような22時半頃までがベストではないかと思う。もちろんルートによって異なる部分もあり、近畿圏をR163のショートカットルートで抜けるなら酷道25号を安全に通過するためにお昼間に出発すべきだろう。
小田原〜藤沢あたりまでの渋滞が普段どんな感じなのかは分からないのだが、もしもう少し早い時間に出発することであれを回避できるならそれもありかもしれない。逆に、箱根の下りを夜に抜けるのはどう考えてもリスキーなので、24時をすぎてからの出発はオススメできない。
(3)機材/ウェア
自転車そのものはカーボンであろうと、アルミであろうと大差ないと思う。全体に占める登りの割合はきわめて軽微なので、軽量さは必ずしも武器にはならない。
時間のロスを最小限に抑える意味でもタイヤのパンクだけは極力避けたいところ。そんなヤツはいないと思うが、レース用の高グリップタイヤなんかでは絶対に走ったらダメ。個人的なオススメはContinental GP4000S、もしくはPanaracer Type D、それと今回使用したHutchinson Fusion3 Tubeless。意外に思われるかもしれないが、Hutchinson Tubelessの耐パンク性能はなかなか優秀で、しかも空気圧を落とせるのでロングライドにはもってこい。データ編も書いたが、空気圧は前後ともジャスト6気圧で設定した。Tubelessホイールは必ずしも必要ではなくて、Mavicはほぼ全銘柄TL化が可能、カンパ/フルクラムも2wayじゃなくてもTLにできる。是非お試しあれ(もち、自己責任で)。
ホイールはR-SYS最強信者なのでこれ以外の選択肢はなし。輪行時に若干の不安がつきまとうが、走行中に関しては身体へのダメージを最小限に抑えてくれる素晴らしいホイール。
もしくは手組みホイールでテンションやや落とし気味で組んでもらっても、身体へは優しくてよいかもしれない。いずれにせよ、スポークが折れたりした時点で達成はアウトだから、あれがいい、これがあかん、っていうモノでもない?
普段は使わないもので、キャノボの時だけ使ったのはトップチューブバッグ。Edge800の内蔵バッテリーだけでは絶対にラストまで電池がもたないので、給電しながら走行する必要がでてくる。それにはトップチューブバッグが最適だろう。各社いろんなものを発売しているが、自分の使ったTopeak Tribagはこの手の商品の嚆矢となったもので、比較的幅が狭くダンシング時に干渉しにくいということを考えると、悪い選択肢ではないと思う。
GPSを使うなら、上記のように外部バッテリーは必須。Edge800の内蔵バッテリーは1100mAh。今回使ったパナソニックのモバイルバッテリーは5400mAhとおよそ5回分!の容量を持ち、なおかつ最大出力が1.5Aと大きいため、「GPSを使用しながらの充電」が可能。事実、自分のEdge800も帰宅後に再起動させたらバッテリー100%だった。一方モバイルバッテリー側もまだ半分ほどは容量を残していたようだ。
ライトに関しては何を使うか迷ったが、光量確保を優先してKD C8 XM-Lを採用した。が、これは専用のLiバッテリーが必要になる。バッテリー持続時間は問題ないはずだったし予備電池も持っていってたが、万が一の事を考えると、電池の入手性を考慮して単三電池で駆動するモノでもよいかも。それ以前に、できれば2灯体制が望ましいだろう。
尾灯は普段使っているBlackBurn Mars4.0をそのまま使用。電池だけ新しいものに換えておいた。猫目なんかの定番を使えばよいと思う。
ウェアは特別な用意をする必要なし。ただし、箱根の下りはかなり身体が冷えるので、その対策だけはしっかりと。暑い時は脱げば済むが、逆は無理だから。
(4)補給
水分はこまめに摂取する必要がある、という当たり前の事は言うまでもない。だが、こまめに摂り過ぎても、今回の自分のように尿意が我慢できずにピットインということになりかねないので、何事もほどほどに。
カロリー摂取は、自分の場合、固形物でもなんでも受け付けなくなるということがないので、お構いなしに食べまくった。ただ、スイーツばかり摂っていたら血糖値は一時的に上がるもののハンガーノックになりかけてしまったので、注意が必要か。自分がおにぎりを主体に摂取していたのはもちろん理由があって(安売りしていたっていうのもあるけど)、たんぱく質を適度に補充しながら走った方が筋肉へのダメージが少しでも押さえられるかと思ったから。そのため、選んだおにぎりもほとんどが、お肉やら魚(鮭)やらが入ったもの。
さらに普段飲んでいるBCAA粉末を100均の容器に入れて持参し、数回に分けて、合計20g程度は摂取した。効果のほどは不明。
ちなみに走行中におにぎりやらパンやらを食べるのはムセたりして苦手なので、コンビニで買った補給食は基本的にその場ですぐ消費した。おにぎりも一個30秒ほどあれば食べられるので時間のロスにはならないと思う。
走行中の補給には、愛用しているハニースティンガーのジェルとバーをあてがった。これらだとムセにくいし、なによりかさ張らないのがよい。他メーカーよりも味がよいので、ハニースティンガーイチ押し。
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なんだかんだ言ってもキャノボって「漢の浪漫」あふれるチャレンジだと思う。自転車乗ってない人はもちろんのこと、乗っている人でも「えっ!? 大阪→東京を1日で?」って耳を疑ってくれる、そんなアホな遊びは他にはそうそうないだろう。
リスクはもちろんある。社会人、ましてや家庭人としてはおかしいかもしれない。
けど、一人の人間としてそれを越えたところにある何かは走ってみないと絶対につかめない。
僕の記録を読んで、心にどこかに少しでも引っかかるものがあった人。是非チャレンジしてください。
Stay Foolish!