「ミラクルボディ」から得た着想

遅ればせながら先日ようやく見たミラクルボディ。内村航平の特集を見たくて録画しておいたのだが、結果的に一番興味深く見られたのが第3夜のケニア人マラソンランナーの回。
ケニア人が強い理由として大きく3つの事を挙げていた。ひとつはフォアフット走法、もうひとつは赤血球の違い、最後の一つはハングリー精神。赤血球の容積が日本の選手に比べ10%程度小さく、毛細血管内を自由自在に行き来するなんていうのは確かに面白い話だが、もはや自分でどうこうできるレベルの話ではないし(超高地生活によるものらしい)、ハングリー精神っていうのも身につけようと思って身につくものではない。自分が最も興味を惹かれたのがフォアフット走法だ。
フォアフット走法というのは従来の踵着地ではなくて、拇指球と小指球をつなぐ前足底〜中足底で着地をするという走法。どんな走法であれ蹴り出しはかならずこの拇指球ラインで行われるわけで、着地と蹴り出しを同じ位置で行うため着地から蹴りだしまでの移行が非常にスムーズに行われ効率がよいとされる。だが従来、踵着地に比べ脚に加わる負荷が強くなり故障を招く走法だとして敬遠されてきた。
ここ数年、この定説を覆す分析結果がいくつも報告され、それに伴い、フォアフット走法自体も見直されてきており、フォアフット走法に適したシューズなんていうのも発売されている。
今回の番組では踵着地とフォアフットでの脚に加わる負荷を測定してみるという検証がなされていた。結果的にはご想像通り、フォアフットのほうが着地時に脚にかかる負荷が圧倒的に少ないという結果であった。数万歩にも及ぶマラソンの行程において徐々に脚に蓄積するダメージが少ないほうがより早く走れるというのは自明の理だ。また、脚、特に下腿に負荷がかかりにくい状態で走っているため非常に脚が細いというのも特徴的だそうだ。
これを見ていてふと連想したがペダリング。フォアフットと同じく、ペダルと身体の接点は「拇指球ライン」が基本とされている。またプロ自転車選手の下腿はやはり著しく細い。これってペダリングとフォアフットに共通項があるんじゃないかと妄想してみたわけ。
フォアフット走法の場合、着地時の地面と下腿のなす角度が踵着地に比べてより垂直に近くなる。スッと脚を浮かせて水平に滑らすように足を前に持って行き、地面と垂直になるように接地する。ペダリングの上死点から3時方向あたりまでの動きのイメージに非常に近い。また、重心位置と接地点の前後位置が踵着地より近くなるというのもポイントだと思う。その結果重心位置が安定しやすくなるのだと思われる。
自転車の場合、サドル前後位置はペダル軸と膝が垂直になるように設定するわけで、平地を走っている限りはまさにこの垂直方向への踏み込みができているはず。だが、上りでは重心位置が重力で後ろにさがり、膝の位置も相対的に後ろめになってしまう。フォアフット的な脚の使い方、つまり踏み込みを垂直に行うには身体をサドルの前の方にもってくるのが理にかなっているのではないだろうか。結果として、余計な負荷を下腿にかけず、ふくらはぎが攣るなんていう事態を回避できるようになり、また筋疲労も招きにくくなるような気がしている。
こういう着想を得てからのここ数日、以前にもまして登りでの前乗り走法に積極的になった。サドル位置を変えたのもその一環。
垂直に、垂直にと(心のなかで)唱えながらペダリングしていると、今朝のような疲労の蓄積が間違いなくある状況でも、ハムストリングスや臀筋などの比較的大きな筋肉を動員できるようで、高強度な練習もなんとかかんとかできてしまう。
今季の残りはこのペダリングをもう少し煮詰めていきたいなと考えている。