BG-FIT体験記 その2

BG-FIT体験記,フィッティング編.
問題1. ペダリング時に膝が直線的な上下動をせず,円弧を描いている
フィッティングでまず行ったのはシューズのインソールの調整.
具体的にはシューズ内でのカント角を調整する訳だ.
これがまさにSpecializedのシューズが売れている理由なのだが,シューズの内側に若干の勾配を付けることで,膝の内転が抑制され上下のみに直線的に動作するようになるという理屈.
ここに図入りで記事があるので参照してもらえればよりイメージがわきやすいか.
自分自身で自転車で確認するのもいいが,視覚的に少し分かりにくい.もっと分かりやすくするには,片脚で屈伸を行うと良い.
カントを付けずに片脚屈伸を行うと,見事に膝が内転していくのだが,カントをつけたインソールを床に敷いた上で屈伸すると,ぴたっと膝が安定し,驚くほどに屈伸がしやすくなる.
もちろんカントだけではなく,土踏まずの描くアーチをインソールで補填している作用も大きい.BG-FITでは専用のボードの上に立つことでアーチを計測し,アーチの高さに合わせて3種類のインソールから最適なものを選ぶ.
こうして,アーチとカントを調節したインソールをシューズに入れるのだが,僕の場合もそうだったが,たいていの人は購入時にジャストフィットになるシューズを選んでおり,インソール+カント調節板が分厚いと足の指と甲が圧迫されてしまい,長時間のライドに耐えられなくなってしまう.
カント板2枚を用いるのがベストであったが,やむを得ず1枚のみにしたが,これだけでもずいぶん膝の動きが改善した.
次にクリートの位置合わせ.
クリートの位置というと母指球というのが定番で,僕も母指球に合わせていたが,BG-FITでは母指球直下よりもやや後方,5mmほど後を推奨しているようだ.より詳細に説明すると,母指球と小指球の位置を測定し,その中間辺りにペダル軸が来るようにする.
クリートは靴にまっすぐに装着する.僕は右膝を痛めたことがあり,若干内股気味になるようにセッティングしていたが,前述のカント調整を行った後であればまっすぐにした方がよいとのことであった.
問題2. 下死点で脚が伸び切ってしまっている:サドル高が高い,サドル後退幅が大きすぎる
靴周りのセッティングが終わると,いよいよバイクのセッティングに移る.
まずはサドル周辺から.
測定を行った時に真っ先に指摘されたのがサドルが高すぎる,後ろ過ぎるということであった.下死点では膝が伸びきり,スムーズにペダルを後方・上方へ送ってやることができず,結果としてペダリングの回転運動で制止する瞬間ができてしまっていた.自らペダリングにブレーキをかけているようなものだ.片脚ペダリング,それも固定ローラーでタイヤを接地させずに無負荷で片脚ペダリングを行うときに顕著で,如何に自分のペダリングが理想的なものからほど遠いかよく分かった(笑)
元MTB日本チャンピオンの竹谷選手は,無負荷ペダリングをしてもまったくクランクから音がしないらしい.
僕の場合,腸腰筋などの体幹の筋肉をほとんど用いず,膝だけの運動になってしまっているのが原因だろうとのこと.
サドル後退幅がもともと9cmとなっていた.自分ではもう少し後退幅が小さいと思っていたのだが,ちゃんと計測していなかったので実測してみると想像よりもずいぶん後ろ乗りになっていたようだ.サドルを都合2.5cmほど前に出したことで,結果として相対的にサドル高も低くなり,下死点でのペダリングはかなりスムーズになった.
正直に言って,なんで今でこんなにペダリングしにくい位置で合わせていたんだろうと,自分で自分が分からなくなった.
問題3. 「ラクダのこぶ」を作ろうとしている
最後にいじるのがハンドル周り.
実は今回のフィッティングで最も目から鱗だったのが,ここ.
今まで色んな自転車雑誌のフォームに関する記事を読んでは,「骨盤を立てなければならない」と思い込んで,自分なりにそれを実践してきたつもりだった.
某エンゾ氏の提唱する「ラクダのこぶ」理論は,ランスアームストロングも似たようなフォームだし,正しいんだと思ってきた.
BG-FITではそれを真っ向から否定する.
ランスが「ラクダのこぶ」を作っているのは,腰椎すべり症という持病のためやむを得ずに採用しているフォームであるらしい.正しい例としてカンチェッラーラなど,他のツール出場選手の写真を見せてもらったが,改めてみると,なるほど,ラクダのこぶがある人はいない.むしろ,BG-FITが推奨する通り,骨盤を軸として自然な形で身体を前屈させ,腹圧を高めることでお腹がぽっこり飛び出しているように見える.ブラケットを握るのも,下ハンを握るのも基本的には同じことで,前屈の傾斜角を変えているだけ.
前屈の姿勢から自然に腕を伸ばした位置にブラケットが来るようにセッティングすれば,おのずとステム長は決まってくる.
ステムの角度,ハンドル高は身体の柔軟性によってどこまで無理なく前屈できるかで,決めればよい.
僕はハンドルまでの距離はいじらず,ハンドル高を10mm上げ,身体に無理なく下ハンを握れるポジションとした.
ハンドルの「送り,しゃくり」はブラケットを握ったときに手首が「握手をするときの角度」になるようセッティングすると自然な形におさまるようだ.
以上,でBG-FITは終了.ただし1ヶ月後に再度チェックをしてもらえる.実際に,新しいポジション・フォームで走ってみての効果を確認し微調整を施す作業になるようだ.

BG-FITを終えて

雑誌でのポジション理論,フォーム理論にも一面の真理はあると思うが,やはりメディアの限界か,最大公約数的な記事になってしまうのは否めない.BG-FITが絶対的な正解であるとは言い切れないが,個々人の身体能力に合わせてフィッティングしようというコンセプトには共感できるし,実際体験してみて,目から鱗が落ちまくりであった.
価格的にはやや高価なサービスであるが(僕はオープン記念価格だったが),得られるものはそれなりに大きいと思う.
最後にこっそり教えるが,今回のBG-FITで実践されている内容のほとんどはCYCLE SPORTS誌の2009年12月号の巻頭記事,竹谷氏の特集で説明されている.お金を出すのがもったいないという人は,こちらを当たってみるべし.
CYCLE SPORTSの竹谷氏の特集は必読!