「エネルギー代謝を活かしたスポーツトレーニング」

当直明け。ぼちぼち起こされて刻み刻みの睡眠だが、合計は6時間強といったところ。脚は重い。
今日は完全休養の予定。
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当直中に読んでみた本。

エネルギー代謝を活かしたスポーツトレーニング (KSスポーツ医科学書)

エネルギー代謝を活かしたスポーツトレーニング (KSスポーツ医科学書)

同じ八田先生著の「乳酸を活かしたスポーツトレーニング」の続編的な内容。まあ、この本だけ読んでも十分内容は理解できる。ちなみに八田先生は、現シマノレーシングの西園選手を育てたBlueWych柿木氏と共同研究されている運動生理学者で、持久系運動におけるエネルギー代謝の研究をしているみたい。(特に乳酸について)
この本では持久系スポーツにおいて、エネルギー代謝の側面から効率的なレース展開・練習を検討している。
まとめてみると以下のようになる。

    • 安静時・運動時を問わず糖・脂質はいずれも同時に利用されており、どちらか片方だけというのは特殊な状況以外存在しない。
    • ただし運動強度によって糖と脂質の利用割合は変わってくる。安静レベルで糖:脂質=1:2、強度が上がるにつれて糖の割合が上昇していく。
    • 糖と脂質の割合が等しくなるのがいわゆるLT(乳酸閾値)あたり。
      ※これはBase Building for CyclistsやCogan本でいうところのL2レベルに相当。
    • 糖代謝が高まる理由としては、このレベル以上では速筋線維が動員されはじめるから。LT以下では主に遅筋線維が使われる。
    • 速筋線維はミトコンドリアが少ないため糖や脂質を酸化しエネルギーとして利用する能力が低い。運動するエネルギーを得るためには解糖系が主に使われ、結果として筋グリコーゲンの減少(と乳酸値の上昇)を招く。
      一方、ミトコンドリアに富む遅筋線維では、ミトコンドリア内で電子伝達系による酸化が行われ、筋グリコーゲンの減少が比較的少なくすむ。
    • 筋グリコーゲンは体内に2000Kcal程度しか備蓄されておらず、回復には数日を要する。(レース中には回復しない。)よって、持久系スポーツでは如何に筋グリコーゲンの減少を抑えつつレースを展開するかが重要になってくる。
    • つまり遅筋線維の酸化能力を向上させることでLT値を上昇させ、筋グリコーゲンの消費を抑えることが大事。LT値に影響するのは、呼吸循環能力よりも、主動筋の酸化能力(ミトコンドリアの増加、毛細血管の発達)である。

結論としてはL2-L4下ぐらいの強度の運動でLT値を上昇させましょうっていうこと。
もう一つ大事なことは、LT値を上昇させるには強度よりも「時間」が大事だそうだ。まさにLSDということですな。
心肺機能を高め、速筋線維の能力向上を図るためにはL5以上の練習が必要になるのも事実。こうした高強度練ではエネルギー供給源としてクレアチンリン酸系(CP系)が重要になってくるのだが、一度利用されたクレアチンリン酸の再合成には筋肉の酸化能力がものを言うらしく、裏を返せば高強度練をしっかり行うにはそれ以前に酸化能力の向上、つまり遅筋線維の基礎をしっかり築き上げることが必要になってくる。
こうして考えると、オフシーズンには高強度練の必要がなく、LSDを主体とした低強度・長時間練が重要である理由が理解しやすいのではないだろうか。少なくとも、自分はもやもやしていた部分がかなりすっきりした。
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ちなみに、運動開始時や運動強度が上昇する瞬間っていうのは、エネルギーをほぼグリコーゲンに頼っているらしい。
ロードレースで言えば、アタック(かける場合もかけられる場合も)でグリコーゲンを消耗するのはやむを得ない部分があるとしても、たとえばコーナリングで離されて、その都度ギャップを埋めるために瞬間的とは言えペースを上げる行為もまさにこれに該当し、徐々にグリコーゲンを削られていくわけ。長距離のレースになればなるほどこのわずかな蓄積が大きな差になるわけで、やっぱりライディングスキルの向上は至上命題の一つだと言えそう。
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続く、かも。